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2023 ⁄ 06 ⁄ 02
戦後初!沖縄から消えた幻の酒“粟盛”の再現を目指すプロジェクトが始動 ~第一弾は2023年夏頃発売予定~

戦後初!沖縄から消えた幻の酒“粟盛”の再現を目指すプロジェクトが始動 ~第一弾は2023年夏頃発売予定~

沖縄県内で酒類卸問屋を展開する南島酒販株式会社(所在地:沖縄県西原町 代表取締役社長:大岩 健太郎 以下、南島酒販)は忠孝酒造株式会社(所在地:沖縄県豊見城市 代表取締役社長:大城 勤 以下、忠孝酒造)と連携し穀物の粟と米で作られた幻の蒸溜酒“粟盛(アワモリ)”の現代的な解釈を加えた再現に挑戦しました。“粟盛”は「泡盛」の語源とも言われる戦前に存在した蒸溜酒ですが、戦後一度も再現されたことがなく、今回再現する“粟盛”は学術的にも貴重な酒となります。
本プロジェクトでは挑戦的な泡盛を造るブランド「shimmer」より2種類の“粟盛”を数量限定で製造し、第一弾では「羽地産ひとめぼれ」と粟、第二弾では貴重な沖縄在来米である「仲村渠産羽地赤穂(ハネジアカフ)」と粟を原料とした“粟盛”を製造します。第一弾は2023年夏頃、第二弾は2024年春頃の発売予定となり、購入をご希望の方は、公式サイト上にてメールアドレスをご登録いただき、販売開始通知をお受け取りください。

失われた幻の酒“粟盛”と“沖縄在来米”泡盛

 「泡盛」の語源には様々な説が存在しますが、『沖縄学の父』と呼ばれる伊波普猷氏は、泡盛の原料に米と共に粟が使用されていたことから「粟盛」→「泡盛」に変化したという粟説を提唱しています。実際に琉球王国時代、王府から泡盛を製造する焼酎職に米と粟が支給された記録が残っており、大正時代の報告書にも泡盛の製造に一部粟が使用されていたことが記載されています。現在の法律上、泡盛は米麹と水のみで製造する必要がありますが(※1)、戦前の泡盛にとって「穀物の粟」は原材料として重要な存在だったことが分かります。

一方、現在の泡盛の原料としては一般的にタイ米が使用されていますが、タイ米の使用が一般に定着したのは昭和初期からであるとの記録が残っています。琉球王国時代の泡盛は「沖縄で生産された在来米」を使用して製造されていたと考えられています。

しかし、粟を使用した“粟盛”も“沖縄在来米”を使用した泡盛も、その生産性の悪さや原材料の価格の高騰などが原因となり戦後の沖縄から姿を消していきました。

古の“粟盛”の再現を目指す

「shimmer」プロジェクトの一環として、泡盛の可能性と多様性を模索する中で我々は、原料に粟と沖縄在来米を使用していたであろう古の“粟盛”に注目しました。“粟盛”は現在の法律上は「泡盛」と呼ぶことが出来ず、単式蒸溜焼酎となるお酒です。(※2)しかし、現代に生きる我々が口にしたことの無い幻の酒であり、沖縄の酒類文化の歴史を紐解く上でも、泡盛の原点とも言うべき大きな価値のある酒であると言えます。

貴重な原料“うるち粟”と沖縄在来米“羽地赤穂”

“粟盛”について残っている少ない情報をかき集める中で、粘り気の少ない「うるち」の粟が主に使用されていたことが分かりました。しかし、現代の日本では需要の少なさから、ほぼ生産が行われていない貴重な穀物となっています。本プロジェクトの実現のために全国的な聞き取りを行い岩手県でごく少量生産されていた貴重な粟を手に入れることができました。

また、沖縄在来米は絶滅の危機を迎えています。貴重な沖縄在来米の生産者を沖縄中で探したところ、我々は南城市仲村渠で沖縄在来米の生産を続けられている仲村渠稲作会の存在を知りました。仲村渠稲作会は地域の方々とともに、琉球神話における稲作発祥の地で行われる田植え行事で大切に受け継がれてきた、沖縄在来の赤米である“羽地赤穂(ハネジアカフ)”を生産し、地域の稲作文化を継承しています。年間90kg程度の収量しか見込めない貴重な仲村渠の羽地赤穂ですが、今年収穫される米の一部を分けていただけることになりました。

沖縄唯一、テロワール泡盛専門蒸溜所「月の蒸溜所」

共に貴重な粟と沖縄在来米、二つの原材料をもとに、戦後誰も口にしたことの無い“粟盛”の再現という難題を実現する為、忠孝酒造に協力を依頼しました。

可能な限り伝統的な戦前の泡盛の製造技術を再現することができる設備。わずかな量の原料から、酒を製造することのできる製造規模。そして何よりも、戦後はじめての“粟盛”の再現を実現する為に必要な高い技術力。それら全てを兼ね備えていたのが、沖縄本島で一番小さな蒸溜所であり泡盛業界初のテロワール泡盛専門の蒸溜所である忠孝酒造「月の蒸溜所」だったのです。

戦前の味わいを再現するために

古の“粟盛”の味わいを再現するために、黒麹と濾過にもこだわりました。それぞれの蔵付きの菌を製麹に使用し、分離培養された単菌の黒麹が存在しなかった時代の麹をできるだけ再現することを目指し、4種類の黒麹菌をブレンドすることで、多様な株の黒麹菌が混在した時代の麹の味わいを表現しました。また、冷却濾過などの技術が発展していなかった戦前の味わいを表現する為、塵やほこりなどの異物を取り除く保安濾過のみで仕上げる予定です。

未知の味わいをお楽しみください

今回のプロジェクトで製造する“粟盛”の予定本数は、それぞれ100本~150本程度を想定しています。特別な原料を基に杜氏が熟練の技術で製造した、戦後はじめて発売される幻の酒“粟盛”。同じスペックでの製造は一度きりになる予定の貴重な製品です。

忠孝酒造製造担当者コメント

最初に話を聞いたとき「ようやくこの時が来たか」という気持ちでした。10年以上前のことになりますが、ある泡盛の講演会の中でパネリストの一人が「ぜひ、粟で造った泡盛を販売してほしい」と熱く語っていました。その言葉が、ずっと頭の片隅にあり、今回ついに実現できると心が躍りました。

琉球王国時代、粟は泡盛の原料として一般的なものだったようです。泡盛の名前の由来とされるほどです。しかし、現在では粟の生産量自体が少なく、お米と比べても値段が高いため気軽に原料として使うのは難しい状況です。そんな中、南島酒販さんから「原料費が高くなってもよい」「商品はすべて買い取る」という男気溢れる力強いご提案をいただいたわけです。

さて、実際の製造についてですが、粟の量に限りがあるため、失敗することが許されない、とてもプレッシャーが掛かるものでした。蒸し加減、麹菌の破精廻り、蒸溜時の火の調整など、一つ一つ丁寧に確認しながらの作業となりました。希望していた収得量には届きませんでしたが、初めてにしてはうまくいったかなという感じです。蒸溜したばかりで、酒質の評価はまだできませんが、変なクセはなく泡盛と遜色ないと思います。

これまで出来そうで出来なかった粟を用いたお酒造り。南島酒販の想いと忠孝酒造の培ったこれまでの技術が詰まった特別なお酒になっています。ぜひ、ご賞味ください。
(忠孝酒造「月の蒸溜所」杜氏:井上 創平)

※1 「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則(昭和二十八年大蔵省令第十一号)」第十一条の五に基づきます。
※2 「酒税法第三条 第十号」及び「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則(昭和二十八年大蔵省令第十一号)」第十一条の五に基づきます。

shimmerについて

泡盛市場は2004年のピーク以降、徐々に衰退している状況です。このような中、酒造所が単独で実験的・挑戦的な泡盛を開発する際には、人的リソースや生産コスト、在庫リスクといった様々な課題に直面しています。そこで、南島酒販は、泡盛の多様性や品質向上を実現するためには、数々の実験的・挑戦的な製品の開発と市場開拓が必要であると考え、新たな泡盛ブランド「shimmer(シマー)」を立ち上げました。このブランドでは、全ての商品を数量限定かつ1回限りの販売というテーマで展開しています。ブランド名の「shimmer」は、沖縄の方言で“泡盛”を意味し、また英語では「shimmer=煌めき」という意味があり、泡盛の輝かしい発展を願う思いが込められています。「shimmer」は、酒造所に革新的なアイデアや新たな風味を追求する場を提供することで、泡盛市場の活性化を図り、数量限定かつ1回限りの販売という特徴を通じて、希少性と特別感を提供、お客様に新たな泡盛の購入体験を提供します。

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