泡盛におけるカスクフィニッシュの取り組み
これまで様々な泡盛メーカーとコラボし、ホワイトスピリッツとしての“泡盛”をリリースしてきたshimmerですが、
今回新たに樽貯蔵したブラウンスピリッツとしての“泡盛”に取り組みました。
近年のウイスキー業界では、各ブランドが限定商品として「カスクフィニッシュ(後熟)」をした製品を発売しており、高い評価を得ています。
そして樽貯蔵泡盛については、先月コラボした菊之露酒造さんを始めとして数多くのメーカーがリリースしていますが、カスクフィニッシュの製品についてはまだまだ数少ないものでした。
そこでshimmerでは、「カスクフィニッシュ」という技法を泡盛業界でも取り入れ、新たな味わいの製品を生み出すことを考えました。
フィニッシュを行うための中古樽を検討するにあたり、日本国内において樽の販売を多く手掛ける有明産業株式会社さんに問い合わせを行ったところ「マデイラワイン樽」が少量手に入ることが分かりました。
マデイラワインと沖縄
1997年に刊行された『ペルリ提督琉球訪問記(訳:神田 精輝)』によると、アメリカ艦隊ペリー提督率いる黒船は、浦賀に訪れる前に当時の琉球に立ち寄り、
そこで物資の補給を行ったそうです。その際に、琉球王朝の役人と亜米利加のウイスキー・マデイラ酒・シェリー酒で宴会をひらいたことが記載されています。
shimmerチームはこの有明産業さんからマデイラワイン樽が入手できるということを聞き、
沖縄がまだ“琉球王朝”だった時代に一度出会ったマデイラワインと泡盛、その2つを再びカスクフィニッシュという形で組み合わせるということを考えました。
どこの酒造所とコラボを行うか
今回、樽貯蔵というテーマでshimmer製品を検討する中で、やはり外せないことは「原酒とマデイラワイン樽との相性」そして「樽貯蔵泡盛の製造で高い評価を得ているメーカー」という2点です。
そこで候補にあがったのが今帰仁酒造さんでした。
アジア最大の蒸留酒コンペティションである東京ウイスキー&スピリッツコンペティションで3年連続最高金賞・金賞を獲得した銘柄は「殿堂入り」として表彰されます。
今帰仁酒造の『千年の響』は殿堂入りを果たしており、我々はこの『千年の響』をベースに、マデイラカスクフィニッシュを打診したのでした。
何回かのご相談の上、この製品をつくるにあたり、通常の『千年の響』は数年の古酒をブレンドして造られていますが、今回はよりプレミアムな製品とするため16年古酒を原酒として提供頂けることになりました。
初めてのマデイラワイン樽への貯蔵
有明産業さんから今帰仁酒造さんに樽を送っていただき、今帰仁酒造さんにて樽入れの準備が整ったという連絡をいただき、shimmerチームも当日の現場に同席しました。
まずはポンプを利用して大まかに原酒を詰めていきます。
後半は樽から原酒が漏れてしまわないように、ポンプの流量を下げてホース内に残った原酒をゆっくり入れていきます。
そして、最後には容器に原酒を移し、樽による欠減も加味してギリギリまで原酒を詰めていきました
後熟の難しさ
今回の製品については、マデイラワイン樽と泡盛の風味をダイレクトに味わって欲しい、という思いから酒税法上、吸光度を気にする必要がある“泡盛”品目ではなく、“リキュール”品目で出すことにしました。
しかし、今帰仁酒造さんでも後熟の取り組みを行うのは今回が初めて、ということで「どのタイミングで樽出しを行うか」が、今回のポイントとなります。
吸光度を気にする必要がないとはいえ、沖縄の高温多湿の環境の中で樽感を出しすぎないようにするか、そのタイミングを見計らうため、
週間に1度サンプルをテイスティングし、約4ヶ月間の後熟期間を経て樽出しを行うことにしました。
焼酎・泡盛業界においてマデイラワイン樽でフィニッシュされた製品、というのは世界初となります。
2023年の南島酒販酒類展示会では本製品を試飲サンプルで出したところ、試飲した多くのお客様から好評の声をいただきました。
約170年前の琉球王朝時代から時を超えて再び出会ったこの2つの酒に思いを巡らせながら飲んでみてはいかがでしょうか?『shimmer#15 千年の響16年 Madeira Cask Finish』、是非お手に取ってみて下さい。