次の新たな『白百合イヌイ』とは?
shimmerシリーズの第1弾である『shimmer#1 常盤 汲水歩合130仕込』が世界三大酒類品評会に数えられる“サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション2023(SFWSC2023)”において最優秀金賞を受賞しましたが、2年前のSFWSC2021では池原酒造の『白百合イヌイ』が泡盛として初の最優秀金賞を受賞したのも記憶に新しいでしょう。
そんな『白百合イヌイ』で新たな挑戦をするのであればどうするか、そうした発想からこの商品は生まれました。元々、池原酒造で『白百合イヌイ』を開発した際も、個性的と称される『白百合』を更に個性的な味わいにするために、戦前の黒麹菌であるイヌイ株に注目したそう。
辛口でインパクトのある味わいと華やかでパンチの利いた香りを特徴とする『白百合イヌイ』をより個性的にするために、酵母に注目することにしました。
泡盛101号酵母を親株として生まれた101ハイパー酵母
泡盛造りは戦前において、酒造所ごとに異なる酵母を使用することが一般的でした。しかし、酵母の管理や品質の問題から製造の失敗が多かったそうです。更に、沖縄戦により当時の微生物が多く失われる中、1979年に泡盛1号酵母が誕生し、醸造の安定性が大幅に向上しました。その後、1988年には新里酒造さんで泡盛1号酵母から泡なし酵母である泡盛101号酵母の分離が成功し、より生産効率が高く、風味バランスが良い酵母として現在も多くの酒造所で使用されています。
長らく、泡盛造りにおいて泡盛101号酵母が主に用いられてきましたが、2015年に奈良先端科学技術大学院大学(高木博史教授)、琉球大学(外山博英教授)、および株式会社バイオジェット(塚原正俊代表)が共同で、泡盛の風味を開発するプロジェクトを立ち上げました。
このプロジェクトでは、泡盛101号酵母から新たな酵母を育種・選抜し、より香気成分が増強された“101ハイパー酵母”が開発されました。
この酵母は、「バナナのような香り」と例えられる”酢酸イソアミル”の生成量が泡盛101号酵母と比較して2倍以上増加したものとなります。shimmerチームは、泡盛101号酵母をベースに進化したこの101ハイパー酵母を利用することで、『白百合イヌイ』の個性を損なわずに、泡盛自体も次のステージに進化させることができるのではと考えました。
101ハイパー酵母の酒母造り
池原酒造さんも含め、多くの泡盛メーカーでは泡盛101号酵母が利用されており、泡盛101号酵母は乾燥酵母という、取扱し易い形で流通されています。
今回利用する101ハイパー酵母は乾燥酵母ではないため、池原さんとバイオジェットの塚原さんと一緒に酒母造りから始めました。
まずはタッパーで予め保管された米麹をお湯と一緒にし、混ぜ合わせていきます。
適宜温度計を確認しつつ、一定温度になるようお湯を追加していきます。
ある程度の温度に落ち着いたら、ここで酵母を投入。
酵母がよく混ざるように撹拌を行います。
こうして用意した酒母を一定期間保管し、仕込みに利用していきました。
池原酒造初の酵母を変えた”白百合”
池原酒造さん造る“白百合”は、今までも「ミドルカット」「チョコレート専用」といった趣向を変えたものがリリースされていました。そんな池原酒造さんでも「酵母」を変える取り組みは初めてだったそうです。
「個性的」と言われる白百合が、正当進化した酵母を利用したらどうなるか?ぜひお楽しみください。