ブレンド技術”について広く知ってもらうために
#11の記事では、古酒の分留について触れましたが、#12の本記事では後半のブレンドについてお伝えできればと思います。
今回の企画において、沖縄国税事務所の初代ブレンダーズ・オブ・ザ・イヤーを受賞した石川由美子さんを擁する石川酒造場としては「メーカーのブレンド技術もフォーカスする」というテーマがありました。 実はshimmer#11/#12とも、「26年古酒を再蒸留する」ということがセンセーショナルに取り上げられがちですが、製造という面においては「ブレンド」が非常に難しい案件でした。
100パターン以上のブレンド案を検討
今回のブレンドの原酒は十数種類となるため、まずは実機での蒸留の前に試留器で分割した泡盛でブレンドの方向性を決める作業から始まります。 shimmerチームからはブレンドするにあたり、2種類の異なる方向性の味わい、1つの分留前の原酒をベースに下としても、ブレンドで対象的な味わいに仕上げて欲しい、という希望を挙げました。 そこでまずは15種の分留した泡盛をテイスティングし、それぞれの特徴を分析していきました。
ブレンドする際の原酒数についてピンと来ない方は、年に1度開催される泡盛鑑評会の出品酒の情報を見るとイメージが付きやすいかもしれません。 多くのブレンドの場合は2~4種類の原酒をブレンドして味を整えられています。 しかし、今回は15種類の組み合わせパターンを検討する必要があります。15種の中から、2種類をつかうのか、15種類全部を使うのか... 数学的に総当りで考えると、膨大なパターン数になりますが、石川さんのノウハウからある程度絞り込み、方向性を絞っていくことになりました。 ただ、それでもその検討に数ヶ月間、100パターン以上を検証したということでした。 こうして、その中でもキャラクターが全く異なる2種類の泡盛のブレンドレシピを考案していただいたのです。
試作レシピと実機製造泡盛の微調整
#11の記事で紹介したように今回再蒸留し、15種類に分留した泡盛を実際にはブレンドしていきます。 前項で触れたレシピ案はあくまでも試留器規模でのレシピ、実機となるとスケール・機材の影響もあり原酒のキャラクターも変わっていきます。 レシピ案があるから、そのままの比率でブレンドするだけ、ではなく試作と本番のギャップを埋めるブレンド作業が始まります。
実機蒸留したブレンド元となる泡盛をそれぞれ用意し、まずは全てのキャラクターを把握しつつ、それらをピペットで取りながら小数点単位のブレンド比率を検討していきます。
この作業を1ヶ月ほど行い、試作レシピで出した方向性に近しい2種類のブレンド比率を作り上げることが出来ました。 こうして出来上がった#11/#12、前者は泡盛の古酒らしい華やかさ、後者はよりビターな味わいと全く異なる性格に仕上がっております。 「古酒の再蒸留」「単純な蒸留ではなく分留」「分留した泡盛のブレンド」という通常では考えられない希少性・手間の掛かり具合を考えると、今まで製造された泡盛でも唯一無二の2本となると思います。 是非、このshimmer#11/#12をお楽しみいただければと思います。
再蒸留に関する記事はshimmer#11 甕仕込 26年古酒分留ブレンド酒 A-sideにて記載しております。