高品質なインディカ米、ジャスミンライスで泡盛を
一般的に市場で流通している泡盛はタイ米を原料にしていますが、今回のshimmerでは”原料米”となるタイ米に焦点をあてました。 企画を検討するにあたり、沖縄県工業技術センターの泡盛ライブラリー内試飲した「ジャスミンライス」泡盛がそのきっかけとなります。技術センターのジャスミンライス泡盛の酒質はキレがあり、今後shimmerで検討するブレンデット泡盛の構成原酒としての活用や高度数にした場合、泡盛カクテルのベースにするなど様々な活用方法が考えられました。
ジャスミンライス泡盛を製造するにあたって、「原料米をどこから取得するのか」、そして「どこで造るのか」、という2点が最初の壁でした。 まずはジャスミンライスを手に入れるため、東京都の米穀専門商社である木徳神糧株式会社に問い合わせしました。 そこでチアメン社のゴールデンフェニックス タイ香り米が手に入ることが判明したので、日本への輸入の手配を行いました。
そして、次に「どこで造るのか」が焦点になるのですが、白羽の矢を立てたのが宮古・伊良部島の宮の華です。 宮の華といえば、『うでぃさんの酒』や『通り池』といった国産米を利用した泡盛を数年前から出しており、今でこそ“テロワール泡盛”として各社が県産米を利用した泡盛をリリースしていますが、 タイ米以外で製造した泡盛を定番商品として扱っている点では業界では先を行く存在でした。ジャスミンライスもタイ米とはいえ、実機で製造した場合に米自体の性質がどうなるか予測がつきません。 そのため、タイ米(インディカ米)から日本米(ジャポニカ米)まで様々な米の扱いのノウハウのある宮の華さんに香り米(ジャスミンライス)での泡盛製造を依頼することにしました。
蒸米当日に宮の華へ
蒸米当日、shimmerチームも現地、宮古島(正しくは下地島)に向かいました。 朝一番の飛行機で下地島空港に到着、天気は快晴で心地よい日差しでした。早速タクシーに乗り、宮の華へ向かいます。
工場では今回の造りに向けて必要なものが準備されていました。 宮の華の麹は石川種麹店の通常種麹に河内源一郎商店の種麹をブレンドしたもので、酵母は泡盛101号を使用します。 また事前にジャスミンライスできちんと製麹できるのかを検証するためにテストをしていたのですが、そのテスト麹も見せていただきました。
実際の作業工程
工場の準備が整い、蒸米の作業時間となりました。 まずはジャスミンライスをタンクに水と一緒に入れて、ポンプを使ってドラム式の製麹機に米を入れていきます。
その後、ドラムを回転させて角度を変えながら水量を調整し、浸漬が始まります。水に浸している時間を確認しながら、実際の蒸し作業に入ります。工場長がボイラーの配管を操作し、ドラムから蒸気が上がります。
通常であればこのまま蒸し上がりが待つのですが、今回のジャスミンライスは通常のタイ米とは異なりました。 蒸米が始まって、数十分後に辺りにポップコーンのような香ばしい香りが漂い始めたのです。
この香りにつられてか、工場の周りに鳥たちが集まり、本日ジャスミンライスの蒸米をすることを知らなかった別作業スペースにいた宮の華のスタッフ達も「今日の香りはいつもと違う」とザワつく状態です。
蒸米が完了し、種麹の散布に
1時間半ほど蒸米を行い、その次は種付けを行います。ドラムを開け、工場長が種麹を散布します。
ドラムを何回転かさせて、満遍なく種麹を散布したあと、ドラムの中で寝かせるということで当日の作業は完了しました。
蒸留後、宮の華を訪れてみると
shimmerチームは蒸米完了後にそのまま沖縄本島に戻り、その後の工程は工場長の手によって蒸留まで行われていました。
蒸留後の原酒状態について気になっていた所、 『shimmer#8 菊之露 保安濾過』の案件で宮古島に行く機会があったので、 下地空港への帰りの道中に宮の華へ訪れてみました。早速、工場長に案内され蒸留後の原酒を見てみると驚きの状態でした。
通常のタイ米で蒸留した泡盛は油分が浮かんでいることが多いのですが、ジャスミンライスで蒸留した泡盛はそのような油分が目で見える範囲には確認できなかったのです。 工場長も蒸留後から何も手を加えてないということから、こうした油分が少ないことがジャスミンライスの特性なのか、と感じました。
また、蒸留直後にあるガス臭といったオフフレーバーもあまり感じられず、辛口でキリッとした味わいに仕上がっている印象です。
宮の華初の44度、そしてジャスミンライスで造られた泡盛を
宮古島にはオトーリ文化があるように、どのメーカーもついつい多く飲んでしまう、飲みよい泡盛が多い印象です。 宮の華の泡盛も濾過をポンプを使わず、重力を利用して濾過を行う方式を取っており、時間を掛けた濾過を行うことでスッキリとした味わいを作っているとのことでした。 今回はそんな宮の華でジャスミンライス仕込、そして宮の華も初めてリリースする44度という高度数帯の特別な泡盛となるため、宮の華ファンの方には手にとって頂きたい1本となります。