晴れた日には台湾を望む日本最西端の地、与那国島。1,700人ほどが暮らすこの島には、数年前まで3つの酒造所が稼働するほどの「泡盛の楽園」でした。 特筆すべきは与那国島の伝統的な弔いの儀式である「洗骨」に60度という高度数泡盛が用いられていたことです。 泡盛は45度までしか認められていない時代に、与那国島だけは文化的な背景から特別に高度数帯の泡盛の販売が許可され、それが島のアイデンティティの象徴として、またお土産品としても重宝されました。
今回shimmerプロジェクトでは一気に4種類もの作品をプロデュースしました。そのパートナーに白羽の矢を立てたのが計画時に与那国島で稼働していた唯一の酒造所「崎元酒造所」。
＃24として「まほろば吟仕込 SakeCask」という今まで発想もしなかった泡盛の公式を導き出しました。蒸留の終わりを通常よりはるかに早い60度という段階に設定。 初留部分をメインに原酒の酒質を設計し、その原酒を日本酒「菊正宗」を貯蔵していた杉樽に約3カ月熟成させ44度に調整しました。日本国でハレの日に行う「鏡割り」。その中から現れるのはまさかの「泡盛」。ワクワクが止まりません！ 

【香り】
田舎の祖父母の家に帰ってきた様な、安心感のある香りでリラックスしてしまいます。
その後に飲み手をもてなす様に、ゆっくりとお醤油やお味噌の等の日本人の本能をくすぐる発酵食品の香りが現れます。 全体的にはミルキーで、月桃の葉のほのかな甘さと、ししとうの様なシャープな香りが交互に現れます。グレープフルーツの様な柑橘系の香りにバナナの様な甘いフルーツの香りも自己主張します。

【味わい】
口に含むやいなや「旨いなぁ、、、」とまったりしてしまいます。ふと我に返ると綿アメとキャラメルの二重奏。
＃23は新樽でしたので、それに比べるとタンニンは穏やか。柑橘系の香りも一枚ヴェールを纏っている様に主張は控えめ。最後に舌の奥の方に移動させると、上等のコニャックを含んだ時の香りと甘みを楽しむことができます。

今回の作品でまず目が行くのがボトルデザインです。 まさかの「クバの葉巻き」。与那国島の泡盛なのでクバの葉を巻きたい！と思うのが人情ですが、これをクバ巻き職人さんに交渉できる情熱と調整力に拍手を送りたいと思います。そしてデザインも一部ビンを露出した視覚的にも実用的にも優れたデザイン。 バーテンダーさんはボトルを傾けるだけで残量が分かる仕組みになっています。現在2人しか残っていないというクバ巻き職人さんの伝統工芸の技術も愛でながらグラスを傾けたいですね。