日本酒好きに好まれる米島酒造の酒を清酒酵母で
『美ら蛍』や『星の灯』など、多くは久米島島内で流通している中で、県内外に多くのファンを抱える米島酒造。 2022年の「第一回酒屋が選ぶ焼酎大賞」では『星の灯』が泡盛部門の1位となるなど、その人気を着実なものとしています。
米島酒造の造る泡盛は、優雅な香りながらも、切れ味のある味わいという米島酒造ならではの繊細さを有しています。 特に県外では「癖のある酒」と称されがちな泡盛ですが、米島酒造の泡盛はその繊細さから日本酒好きに好まれ、日本酒専門店からの発注も多くあるそうです。 そして、米島酒造さん今まで101号酵母での泡盛作りを行っており、101号酵母でここまで日本酒好きに好まれる泡盛を造ることが出来る米島酒造さんが清酒酵母で泡盛を造るとどうなるのだろう? というところからこのプロジェクトが動き出しました。
清酒酵母、どの酵母を使うか
一口に清酒酵母といっても様々な種類があり、有名なところで言えば、公益財団法人日本醸造協会が頒布する『きょうかい酵母』などが挙げられます。 きょうかい酵母では新政酒造場で分離された「清酒用6号」や熊本県酒造研の「清酒用9号」など、日本酒業界で広く親しまれる清酒用酵母を入手することが出来ます。 ただ、今回は『きょうかい酵母』ではなく、青森県産業技術センター弘前工業研究所で頒布される「まほろば吟酵母」の利用となりました。 その理由としては、青りんご用の香りと称される“カプロン酸エチル”の生成量が、カタログスペック上ではありますが、きょうかい酵母と比較して多く、清酒酵母を利用した泡盛としての魅力を引き出せそう、と考えたからです。
実際に仕込みを行ってみて
今回の仕込みは、#6まほろば吟酵母と#7Eleganceを同じ麹で仕込んでいます。 というのも、製麹後に麹を2つのタンクに分けて、それぞれに「まほろば吟」と「Elegance」を投入したのです。 実際に発酵がはじまると、一方のタンクでは清酒の爽やかな香り、そしてもう一方ではワインのような甘い、芳醇な香りが漂ってきました。
焼酎業界でも数少ない清酒酵母の常圧蒸留×高度数商品
出来上がった泡盛を蒸留後、数日でテイスティングしてみたところ、驚いたことにガス臭が感じられませんでした。 また、こうした清酒酵母を利用した焼酎・泡盛は減圧蒸留の商品が多くあるのですが、今回の米島酒造さんの泡盛は“常圧蒸留”となり、減圧蒸留のわかりやすい吟醸香ではなく、中心に吟醸香がありつつも、常圧蒸留ならではの深い味わいが表現されていることが他ではないものに感じられます。 そして、吟醸香の商品は「初心者向け」として企画され、20度帯の低度数になりがちな中、今回は40度の度数に仕上げています。常圧の複雑さと高度数という割材に負けない、特別な清酒酵母泡盛が出来上がりました。