泡盛とはどんな酒?焼酎との違いは?4つの特徴を沖縄県の酒屋が徹底解説
沖縄の名産品の一つである”泡盛”
名前を聞いたことのある方は多くいると思います。
しかし、中々沖縄以外の居酒屋やバーで目にすることもなく、実際どのような酒か知らない方は多いのではないでしょうか?
- 泡盛って焼酎の1種じゃないの?
- 沖縄の酒だからサトウキビからできてるんじゃないの?
- 泡盛はタイ米を使わなければならないんだよね?
沖縄の酒屋として、様々なイベントに出展した筆者はこのような質問を多く聞いてきました。この記事を読んでいるあなたもこうした疑問をお持ちではないでしょうか?
そこで今回は今までに泡盛の酒造所と20銘柄以上を開発してきた筆者が「泡盛とは何か?」4つの特徴を徹底解説しちゃいます!
泡盛について知りたい方はもちろん、豆知識を知ってもっと泡盛を楽しみたい方も、ぜひ最後までチェックしてくださいね。
この記事を書いた人
古謝雄基 Yuki Koja
泡盛の4つの特徴とは
泡盛と焼酎は非常に良く似た酒です。
しかし、芋焼酎や米焼酎といった〇〇焼酎と泡盛を区別する大きなルールがあります。 ここで泡盛の特徴4つを見ていきましょう。
- 原料に米を用いる
- 黒麹菌を用いる
- 仕込みは1回だけの全麹仕込みである
- 単式蒸留機で蒸留する
この4つの特徴を満たすことが「〇〇焼酎」と「泡盛」を区別するルールとなります。これからそれぞれの違いを説明していきますね。
参照サイト:沖縄県酒造組合公式HP
特徴1:原料に米を用いる
泡盛の原料のルールは「"米"を使うこと」
なので、米であれば日本米(ジャポニカ米)であってもタイ米(インディカ米)であってもOKです。
市場にある多くの泡盛はタイ米で製造されたものが多いのですが、日本米で製造されている泡盛も多くあります。
例えば伊是名酒造所の銘柄『尚円の里』は、伊是名島産の”ひとめぼれ”を原料として製造された泡盛です。
ではなぜ、泡盛製造においてタイ米を利用することが多いのでしょうか?
様々な理由がありますが、1つに「タイ米の作業性の良さ」が挙げられます。タイ米料理を食べた際に、米がパラパラとして、日本米より粘り気が少ないと感じますよね
この粘り気の少なさが、泡盛作りの作業をより効率的に行うことができる理由となります。
特徴2:黒麹菌を用いる
2つ目の特徴に「黒麹菌を用いること」が挙げられます。この辺りから普段聞き慣れない言葉が出てきたので戸惑う方も多いのではないでしょうか?まずは、麹について簡単に説明しますね。
酒造りは、単純に言えば様々な原料からアルコールを生み出す作業です。そして、そのアルコールというのは「酵母が糖を分解して生み出されたもの」なのです。
ただ、単純に米と酵母を混ぜただけではアルコールは出来ません。米のデンプンは大きすぎて酵母が分解することが難しいのです。そこで登場するのが「麹」となります。
先に麹菌を米に付着させることで、米のデンプンを麹菌が糖に変換していきます。この麹菌と酵母の働きで泡盛や焼酎、そして日本酒も酒造りを行っているんですね。これが麹の働きです。
そして本題の黒麹菌についての話となりますが、麹菌は大きく分けると3種類あります。
- 黄麹菌:日本酒造りで多く使われる
- 白麹菌(黒麹菌の変異種):焼酎造りで多く使われる
- 黒麹菌:泡盛造りで多く使われる
”多く使われる”と表現しているのは、泡盛以外では特に麹菌の種類の規定はないためです。
例えば黒麹菌で日本酒造りをすることもあります。ただ、先述したように泡盛では「黒麹菌」しか使うことが出来ません。
黒麹菌の大きな特徴が、「クエン酸を大量に生成する」ことです。黒麹菌が生成したクエン酸によりもろみ(米麹と酵母と水を混ぜた発酵中の状態)の酸度を上げることで、亜熱帯の沖縄でも、もろみが腐るのを防げるのです。
特徴3:仕込みは1回だけの全麹仕込みであること
「全麹仕込み」というまたもや聞き慣れない言葉が出てきて混乱している方も多いのではないでしょうか。これは焼酎と泡盛の製法の違いを見ると分かり易いと思います。
この図でも分かるように、泡盛と焼酎の大きな違いは酵母投入後に主原料を入れるか/入れないかという点にあります。基本的な焼酎の造り方だと、米麹と造り、酵母と水を投入して、そこに更に投入した主原料で「〇〇焼酎」と呼びます。芋を入れれば芋焼酎、麦を入れれば麦焼酎という具合ですね。
一方、泡盛の場合は米麹と水と酵母でもろみを造った後は、後から追加で何かを入れることはしません。これが全て麹だけで仕込むという「全麹仕込み」となります。
特徴4:単式蒸留機で蒸留する
蒸留とは、液体を沸騰させて気体にした後、その気体を冷やすことで液体に戻し集める手法です。ビールや日本酒、ワインといったお酒は「醸造酒」と呼ばれ、発酵させてアルコールが生成された液体を蒸留することなく飲みます。泡盛やウイスキーなどの「蒸留酒」はアルコールが生成された液体(もろみ)を蒸留し、より高いアルコール度数の酒を作れます。
酒造りにおいて、この蒸留を行う機械が「蒸留機」となります。蒸留機は大きく分けると以下の2つに分けられます。
- 単式蒸留機
- 連続式蒸留機
単式蒸留機は上の写真のような大きなタンクを1つ備えたものです。蒸留機内にもろみを投入し、熱することでもろみ中のアルコールを集めていきます。一方、連続式蒸留機は簡単に言うと小さな単式蒸留機が大量にあるもので、より純度の高いアルコールを集めることができます。
単式蒸留機も様々な形式があり、泡盛の酒造所でも材質や燃料、形も様々あるので、見学の際にぜひ見て欲しい所でもあります。酒造所によっては撮影禁止のところもある位、味わいに影響を与える設備です。
まとめ
今回は泡盛を定義づける4つの特徴についてご紹介しました。- 原料に米を用いる
- 黒麹菌を用いる
- 仕込みは1回だけの全麹仕込みである
- 単式蒸留機で蒸留する
この4つのルールをぜひ覚えていただけると嬉しいです。また、泡盛は焼酎と異なり40度以上の高度数帯の商品もあります。そのため、普段ウイスキーやジンを飲まれている方であれば抵抗なく楽しめるお酒です。最後に筆者がオススメする泡盛2本をご紹介するので、この機会にぜひ挑戦してみて下さい。
黒糖から採取した酵母を利用した泡盛で、独特の甘さから多くのファンを抱えています。甘めの蒸留酒が好きな方にはぜひ水割りで楽しんでいただきたい1本です。
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2024で、全出品酒の中から7本しか選ばれないBEST OF THE BESTの1本。新開発の南島1号酵母を利用し、従来の泡盛のバニラ香に加えフルーティーさと香ばしさが特徴の1本です。
最後までお読み頂きありがとうございました!