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サトウキビの島沖縄:沖縄産ラムの世界
サトウキビの島沖縄:沖縄産ラムの世界

諸君 私は泡盛が好きだ
諸君 私は泡盛が好きだ
諸君 私は泡盛が大好きだ
……諸君 私は洋酒も大好きだ
 
ということではじまりました。仕事1割趣味9割でお酒好きの泡盛マイスター兼ウイスキーエキスパート、千葉雄大a.k.a.泡盛洋酒ニキがお届けする『諸君、私は泡盛が好きだ』のコーナー。企画第2弾にしてまさかの番外編。今回は沖縄産ラム特集です。

サトウキビの日本における一大生産地である沖縄。沖縄では歴史的経緯から、サトウキビとそれを原料とする黒糖の製造が昔から盛んです。泡盛に次ぐ地酒として近年注目が集まり始めているのが、そのサトウキビや黒糖を原材料として造られるお酒・ラム。

サトウキビの島・沖縄県産ラムの世界をご紹介します。

ラムとはなんぞや?

ラムと聞いて、あまり馴染みの無い方も多いのではないでしょうか。一言でラムとは何かを説明すると、サトウキビを原材料として造られる蒸留酒のことです。

サトウキビ畑

サトウキビの生産地域を中心に、世界中の国々で製造されています。熟成の方法や製法、味わいなどで様々な分類が存在しますが、ここでは沖縄で造られているラム酒の種類を、製法ごとに簡単に紹介しましょう。

トラディショナルラム

バカルディ

サトウキビの搾り汁からお砂糖を生成する際に、糖分やミネラルなどを含んだ液体=廃糖蜜(モラセス)が生まれます。このモラセスを原料に造られたラムを、伝統的な製法であることからトラディショナルラムと呼びます。

廃糖蜜の”廃”の字のイメージが悪いということで、廃糖蜜は別に悪い素材でも廃棄物でも無いのですが、単に糖蜜や英語の「モラセス」と呼ばれることも多いです。大規模な工業生産品として造られる製品も多いことから、インダストリアルラム(工業生産品のラム)と呼ばれることもあります。世界のラムの内、8割以上がトラディショナルラムです。

写真は世界で最も有名なトラディショナルラムと言える『バカルディ』

 アグリコールラム

トロワ・リピエール

サトウキビの搾り汁から砂糖を生成せずに、サトウキビジュースをそのまま100%原材料とするラムをアグリコール(農業生産品)ラムと呼びます。

19世紀後半にフランス植民地領で確立した製法で、仏領マルティニーク島で造られるアグリコールラム(トロワ・リビエールなどの銘柄)が有名です。サトウキビジュースは搾ってすぐに醗酵・酸化がはじまる為、サトウキビの生産地で収穫シーズンにしか造れない貴重なスタイルのラムです。

写真はアグリコールラムの代表的銘柄『トロワ・リビエール』


ハイテストモラセスラム

サトウキビジュースを一度加熱し、砂糖を生成せずにシロップ化させた「ハイテストモラセス」を原料としたラムをハイテストモラセスラムと呼びます。黒糖を原料としたラムもここに含まれ、最も新しい製法・分類のラムです。

沖縄県は製造法で分類をした際の3つのスタイルのラム、全てが造られている世界的にも珍しい地域となっています。また蒸留方法に関して、世界的にはより高いアルコール度数と洗練された酒質を得ることができる、連続式蒸留器を使用する国や地域も多いですが、沖縄ではより素材の個性を感じることができる単式蒸留器を使用するメーカーがほとんどです。

ここからは、沖縄産の代表的なラムを紹介します!

オキナワ・ラムのパイオニア:ヘリオス酒造

樽熟成泡盛「くら」で有名なヘリオス酒造さんは、「沖縄でとれる作物で、地域に根差した酒を造りたい」との創業者の想いで、1961年ラムの製造を行う合資会社太陽醸造として創業されました。

太陽醸造

以来、60年以上ラムを作り続けている沖縄ラムのパイオニア的メーカーです。泡盛メーカーさんとしては珍しい銅製のポットスチルを使用して、ラム・泡盛・ウイスキーなど多彩なスピリッツを製造されています。
 ヘリオス酒造さんのラムの中で看板商品はなんといっても『HELIOS RUM 40度』。

沖縄産サトウキビ由来の豊かな香りと、後味のキレが特徴。ゴリゴリとしたワイルドな味わいの力強いトラディショナルラムです。オススメの飲み方はガッツリとライムを搾ったラムコーク。沖縄県民にはお馴染みの地コーラ「琉球コーラ」との相性もgoodです。

世界的にも珍しい沖縄産アグリコールラム:グレイス・ラム

沖縄本島の東に約400㎞、太平洋の真っ只中に浮かぶ南大東島で造られるアグリコールラムが『COR COR AGRICOLE 40度』(通称コルコル緑)です。

コルコルを造られている、グレイス・ラムさんは2004年に沖縄電力内の社内ベンチャー制度によって設立された会社。島の特産品であるサトウキビの搾り汁を原料に、ラムを製造されています。『COR COR AGRICOLE 40度』の香りと味わいは、ドカンとフレッシュなサトウキビの味と香りを楽しむことができる濃厚な味わい。口に含むと沖縄のサトウキビ畑が目の前に広がる、一度飲むと忘れることができないインパクトのあるラムです。まずはストレートやオン・ザ・ロックで、芳醇なサトウキビの香りと味わいを楽しんでください。

サトウキビの収穫シーズンにしか、アグリコールラムは製造できない為、COR COR AGRICOLE シリーズは数量限定の商品となっています。その他にもグレイス・ラムさんでは南大東島産のモラセスを使用したトラディショナルラム、『COR COR 40度』(通称コルコル赤)もリリースされています。コルコル赤のスモーキーな香りと強烈な個性は一部の酒マニアの間でも話題となっています。

世界から注目される高品質ラム:伊江島物産センター 伊江島蒸留所

沖縄北部に浮かぶ伊江島で、島で生産されたサトウキビだけを原料に2011年から造られているラムが、世界から注目させている『イエラム サンタマリア』です。『イエラム サンタマリア』はサトウキビのジュースを濃縮したシロップを原料に、年間を通して製造されるハイテストモラセスラムです。
※ハイテストモラセスラム自体が比較的新しい分類の為、サトウキビジュース100%から造られる「イエラム サンタマリア」はアグリコールラムとされることもあります。

『イエラム サンタマリア』の名前の由来は伊江島の名物となっているテッポウユリ。高級感のある素敵なラベルにも伊江島と百合の花が描かれています。聖母マリアの象徴であるテッポウユリはイースターリリーとも呼ばれ、ヨーロッパの国々で愛されています。

伊江島

代表的な銘柄はアルコール度数63%の原酒をステンレスタンクで1年ほど熟成後、37%まで加水ししっかりと濾過を加えた『イエラムサンタマリア クリスタル』と、2~3年ウイスキーの中古樽などのオーク樽で熟成後、複数の樽をブレンドし加水・濾過を行った『イエラムサンタマリア ゴールド』の2銘柄です。

イエラム・ティポンシュ

クリスタルはフレッシュなサトウキビの風味を感じながらもまろやかでスッキリとした上品なホワイトラム、ティポンシュ(ライムとケーンシロップ、アグリコールラムを混ぜ合わせたシンプルなカクテル)やモヒートなどの南国のラムカクテルのベースにピッタリな味わい。

一方のゴールドはふくよかで優しい樽香とサトウキビの爽やかな香りのバランスが絶妙で、ストレートやオン・ザ・ロックでゆったりと楽しむのはもちろん、ラムコークやライムを搾ったハイボールもオススメの飲み方です。

『イエラム サンタマリア』は発売当初、アグリコールラムとして有名なマルティニークのトロワ・リビエールのような高品質なラムを目指して商品開発を行ったとのこと。全体的な特徴として、「イエラム サンタマリア」シリーズは沖縄ラムの中で一番上品でエレガントな酒質のラムをリリースされています。

伊江島蒸留所では、他にも50度というハイプルーフかつ濾過を最小限に抑えてサトウキビのクセをあえて残した『イエラムサンタマリア スプリム』、カスクストレングスのプレミアムTシリーズや、ワイン樽やシェリー樽など世界中の様々な樽を使用したボヤージュシリーズ、吉祥寺のラムBAR・SCREWDRIVERのオーナーバーテンダー 海老沢 忍氏とのコラボレーションシリーズ「イエラボ」など精力的にハイクオリティなラムのリリースを行っています。

 老舗泡盛メーカーが手掛ける”オール宮古島産ラム”:多良川

泡盛の『琉球王朝』で有名な宮古島に位置する泡盛の老舗メーカー、多良川さんが手掛けるラムが『MAKUGAN(マクガン)40度』です。

原材料は宮古島産サトウキビから取れた糖蜜(モラセス)。仕込み水や割り水には宮古島の水を使用。酵母には多良川さんの側にある製糖工場から採取された宮古島産原生酵母・MY17株酵母を使用し、宮古島の酒職人が蒸留したという”オール宮古島産ラム”であることが特徴。

マクガンは宮古島に生息する世界最大の陸生節足動物「ヤシガニ」の宮古島での方言名、現在は絶滅危惧2類に指定されるなど数が減ってしまっており、宮古島の豊かな自然を大事にしたいという気持ちも込めて象徴的に名付けられたそうです。ラベルにもインパクト抜群のヤシガニの絵が描かれています。(個人的に大好きなデザインです)

※余談ですが、世界最大の陸生節足動物にして世界最強の甲殻類ヤシガニ。今では非常に数が少なくなってしまい、出会う機会も限られてきています。下の写真は学生時代にヤシガニを発見した興奮と恐怖でガン○マリ状態になっているフレッシュな洋酒ニキです……

ヤシガニガンギマリ千葉くん

後で知ったことですが、この持ち方はヤシガニに挟まれる可能性が高く非常に危険。決して真似しないでください。

☆ヤシガニの正しい持ち方と挟まれるとどうなるかは、生物ライター平坂寛さんの下記の動画参照です。

 『MAKUGAN(マクガン)40度』は糖蜜から造られたトラディショナルラム、良い意味で沖縄を感じさせる爽やかなサトウキビの香りと、まろやかな口当たりが最大の特徴。飲み方はそのままストレートやオン・ザ・ロックで楽しむのも良いですが、トマトジュース・レモンジュースでアップしウスターソース・タバスコで味付けをする定番のラムカクテル:クバニートや、ライムと砂糖をロックグラスに氷と一緒に入れMAKUGANを注ぐラム・カイピリーニャもオススメです。

※多良川さんのMAKUGAN・クバニートプロモーション動画はこちら

MAKUGANブランドでは他にも、多良間島産の黒糖を原材料に使用したハイテストモラセスラム『MAKUGAN TARAMA’s Raw Sugar(MAKUGAN多良間の黒糖 43度)』が数量限定でリリースされています。多良間島産黒糖由来のとろみのある口当たりと黒糖の香り・ミネラル感のある味わいが非常に個性的なラムです。多良川さんでは、樽熟成ラムの製造にも取り組まれており、沖縄ラムの中でも今後注目のメーカーさんの一つです。

沖縄の島々のテロワールを表現するハイクオリティラム:瑞穂酒造

首里に位置する1848年創立の老舗泡盛メーカー、瑞穂酒造さんでは「ONE RUMプロジェクト」と題してラム酒の製造開発・サトウキビの品種や産地・ラムの新しい楽しみ方などの研究を、生産農家・大学・研究機関・酒類の従事者が一丸となり進めています。

「ONE RUMプロジェクト」では、離島8島でつくられる黒糖を使用し、1島ごとにラムを製造、各島の黒糖の個性を引き出した「Single Island Series(シングルアイランドシリーズ)」。各島の黒糖から生まれる個性豊かなラムを主体に、様々な原酒をブレンドしベストなバランスのラムを目指す「Blended Islands Series(ブレンデッドアイランズシリーズ)」。2021年2月に植え付けをスタートした、自社ファームで育つさとうきびを使用し、農業からラムの風味を探求するアグリコールラムを目指す「One Island Series (ワンアイランドシリーズ)」の三つのシリーズをすすめられています。

現在は、定期的に数量限定でシングルアイランドシリーズのラムをリリースされていますが、2023年にはブレンドアイランドシリーズの第一弾をリリース予定。また、自社ファームでは瑞穂酒造さんだけではなく県内のバーテンダーさんなど、「ONE RUMプロジェクト」にかかわられている方たちがサトウキビの栽培を行って、アグリコールラムの製造を目指しています

プロジェクトの中心メンバーは瑞穂酒造の商品開発室長・仲里 彬さん。泡盛以外にもジンなど洋酒造りにも造詣の深い今全国から注目されている造り手さんです。数量限定のシングルアイランドシリーズは入手困難ですが、その味わいは各島の黒糖の個性が反映された唯一無二の味わい。見かけることがあれば是非ゲットしてみてください。

その他メーカーさんのラム

沖縄ではその他にも、請福酒造さんでホワイトラムと樽熟成のゴールドラム、名護パイナップルワイナリーさんではフルーツブランデー用ハイブリット式蒸留器を使用したホワイトラムなどが造られています。一般流通はまだまだこれからですが期待大ですね。

名護パイナップルワイナリーラム

また、宮古島では宮古島産のサトウキビを使用して高知の菊水酒造さんで製造した5年物のホワイトラム「蒼の風(あおのかぜ)」が発売されています。

サトウキビの栽培が盛んで、島それぞれに個性のある味わいの黒糖を製造している沖縄。これからもジャパニーズラム最前線・沖縄産ラムの発展に是非注目してみてください。

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